うどん出汁に欠かせない!絶品の香川食材「いりこ」とは
あなたは、「イワシ」と聞いて、どんな魚をイメージしますか?
香川県では、実は「イワシ」といえば「カタクチイワシ」を思い浮かべる人がほとんどなのだとか。この「カタクチイワシ」は普段から家庭に並ぶのはもちろん、茹でて乾燥させた「いりこ」として香川県民のソウルフード さぬきうどんの出汁にも使われています。
この「いりこ」は東日本では「煮干し」とも呼ばれ、多くのご家庭に常備されているような身近な素材です。今回は香川県の特産品でもある、この「いりこ」の魅力に迫ります。
香川県のいりこが美味しい理由は?
香川県の西讃部にある燧灘(ひうちだな)では、全長300mほどにもなる大きな網を2隻でひき、船の間の網に群れを追い込む、いりこ漁が行われています。
実は、香川県は全国でも有数のイリコの産地。鮮度落ちが早いカタクチイワシにも関わらず、香川県ではなぜこんなに絶品のいりこにできるのか。その秘密は、加工のスピードにあります。
いりこは、漁獲されてから煮沸、乾燥という工程があります。この漁獲から煮沸までにかかる時間をいかに短くできるかによって、品質が変わってくるそう。
特に観音寺市にある伊吹島は、漁場の真ん中に位置しているため漁場と加工場が非常に近く、漁獲から加工までを同じ網元(網や漁船を有する漁業者)が一貫して行うことで、時間のロスを減らしているそうです。そのため、他の場所で獲ったカタクチイワシもすぐに伊吹島に運び、加工されているとのこと。この鮮度の良さが、上質ないりこを生み出す秘訣なのでしょう。
煮沸後、約10時間から20時間ほどかけて乾燥させたいりこは、漁獲後早くて翌日、遅くても3日後には専門商社に販売され店頭に並ぶことになるのだとか。瀬戸内海という恵まれた海と、漁獲から加工にかかわる人々の技術によって、絶品のいりこが生まれているのですね。
香川県が誇るブランド「伊吹いりこ」
この伊吹島の沖合で漁獲され加工されたカタクチイワシのうち、伊吹漁業協同組合が取り扱うものを平成23年度から「伊吹いりこ」という名称で地域団体商標に登録されました。
サイズによって、大羽(おおば)、中羽(ちゅうば)、小羽(こば)、かえりという4つの銘柄に分けられているそうです。
いりこは、白口のカタクチイワシを上級としており、その中でも鱗のついたものは料亭などで使用される「銀つき」と呼ばれて最上級品とされています。
まだ馴染みが薄い「伊吹いりこ」。今後、更なる知名度の向上が期待される、ブランドいりこになりそうですね。
香川の人々のいりこ愛は強い
香川県のソウルフード、さぬきうどんにとって欠かせない出汁にも、もちろんいりこが使われています。カタクチイワシから出る濃厚で力強いうま味の出汁は、その香りも大きな特徴の一つ。麺をすするときに鼻にふわっと届くいりこの香りが、うどんの美味しさを引き立てます。
いりこ出汁は味噌とも相性が良く、香川県の家庭では味噌汁にも使われています。また、出汁以外にも魚自体を料理に使われているのは、いりこの産地ならでは。いりこは、フライパンで軽く炙ったり、天ぷらやかき揚げ、チャーハンや煮物に加えたりと、さまざまな料理にも登場しているんですよ。郷土食として親しまれているのを感じます。
また、香川県の西讃にある地酒の蔵元には、炙ったいりこを日本酒に入れた「炙りいりこ酒」があります。日本酒のうま味といりこの香ばしさが同時に味わえるため、人気だそうですよ。特産地ならではの美味しい楽しみ方ですね。
もちろん、香川県高松市における年間一人当たりのいりこ消費量は常に上位。香川の人にとっては、食卓でお馴染みの食材のいりこ。皆さんも是非、味わってみませんか。